告示の概要
保険業法施行規則の一部改正。本改正は、保険会社等の健全性を評価する際の「保険金等の支払能力の充実の状況」の算出方法を大幅に見直す。具体的には、ソルベンシー・マージン基準(リスクに見合う自己資本の充足度)について、経済価値ベースの評価を導入し、より実態に即したリスク評価と資本要件を反映させる。これに伴い、資産の評価、責任準備金の積立て区分、価格変動準備金の計算、保険計理人の確認事項、届出事項、資本金等の健全性基準などが改正される。また、不祥事件の定義も更新され、保険持株会社や少額短期保険業者に関する規定も同様に改正される。
解決される課題・利点
- この内閣府令改正は、保険会社のソルベンシー規制を経済価値ベースに移行することで、リスクの実態をより正確に反映した資本規制を可能にし、保険会社の財務健全性の向上と保険契約者保護の強化を図ることを目的としています。
- 従来の会計基準では捉えきれなかった潜在的なリスクを可視化することで、早期の経営改善を促し、金融システムの安定性にも寄与します。
- 特に、複雑な金融商品や長期契約におけるリスク評価の精緻化は、将来的な不測の事態への対応力を高め、保険会社の持続可能性を確保する上で不可欠な要素となります。
- これにより、保険会社はより的確なリスク管理を行い、経営資源を効率的に配分することが可能となり、最終的には保険契約者に対する安心と信頼の向上につながります。
- 国際的な規制動向との整合性も図られ、グローバルな金融市場における日本の保険業界の競争力強化にも貢献するでしょう。
懸念点・リスク
- 経済価値ベースのソルベンシー規制導入は、高度な数理計算とデータインフラを必要とし、特に中小規模の保険会社にとってはシステム投資や専門人材確保の負担が非常に大きくなる可能性があります。
- 新たな基準への移行期間中の混乱や、複雑な評価モデルから生じる解釈の相違、市場変動への過敏な反応による資本の変動性増大も懸念されます。
- これにより、保険商品価格への影響や、競争環境の変化が生じる可能性も指摘されます。
- また、モデルの過度な複雑性や、前提条件の設定によっては、かえって実態を正確に反映できないリスクも存在します。
- さらに、国際的な規制動向との整合性を維持しつつも、国内の実情に合わせた適切な調整や、規制当局による柔軟な運用が不可欠であり、これらが十分に機能しない場合には、保険業界全体の安定性に悪影響を及ぼす可能性も内包しています。
法令情報
- 法令番号
- 内閣府令第七十一号
- 公布日
- 2025/07/23
- 掲載
- 号外168 2P~15P
原文
保険業法(平成七年法律第百五号)第百十条第三項(同法第百九十九条及び第二百七十二条の十六第三項において準用する場合を含む。)、第百十一条第一項(同法第百九十九条において準用する場合を含む。)及び第二項、第百十五条第一項(同法第百九十九条において準用する場合を含む。)、第百十六条第三項(同法第百九十九条において準用する場合を含む。)、第百二十条第一項(同法第百九十九条において準用する場合を含む。)、第百二十一条第一項及び同項第三号(これらの規定を同法第百九十九条において準用する場合を含む。)、第百二十七条第一項第八号、第百三十条第一号及び第二号(これらの規定を同法第二百七十二条の二十八において準用する場合を含む。)、第二百二条第一号及び第二号、第二百九条第九号、第二百二十八条第一号及び第二号、第二百三十四条第八号、第二百七十一条の二十四第二項、第二百七十一条の二十五第一項、第二百七十一条の二十八の二第一号及び第二号並びに第二百七十一条の三十二第二項第八号の規定に基づき、保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令を次のように定める。 令和七年七月二十三日 保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令 内閣総理大臣 石破 茂 保険業法施行規則(平成八年大蔵省令第五号)の一部を次のように改正する。 次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分(連続する他の規定と記号により一括して掲げる規定にあっては、その標記部分に係る記載)に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)は、その標記部分が同一のものは当該対象規定を改正後欄に掲げるもののように改め、その標記部分が異なるものは改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し、改正前欄に掲げる対象規定で改正後欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを削り、改正後欄に掲げる対象規定で改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを加える。 (資産の評価) 第二十四条の三 [略] (特定投資家として取り扱うよう申し出ることができる個人) 第五十二条の十三の十二 準用金融商品取引法第三十四条の四第一項第二号に規定する内閣府令で定める要件は、次に掲げる要件の全てに該当することとする。 [略] 二 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、承諾日における申出者の資産(次に掲げるものに限る。)の合計額が三億円以上になると見込まれること。 [略] ロ デリバティブ取引(金融商品取引法第二条第二十項に規定するデリバティブ取引をいう。第五十二条の二十第一項第四号、第五十二条の三十二第二号及び第五十九条の二第一項第五号ホ33)において同じ。)に係る権利 [略] (業務及び財産の状況に関する説明書類に記載する事項等) 第五十九条の二 法第百十一条第一項に規定する内閣府令で定めるものは、次に掲げる事項とする。 [略] 三 保険会社の主要な業務に関する次に掲げる事項 イ [略] ロ 直近の五事業年度における主要な業務の状況を示す指標として次に掲げる事項 (150から100までに掲げる事項については、保険金信託業務を行う場合に限る。) [略] 100 保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率(法第百三十条の保険金等の支払能力の充実の状況が適当であるかどうかの基準(保険会社に係る同条各号に掲げる額を用いて定めたものに限る。)に係る算式により得られる比率をいう。第七十七条第九号において同じ。)及び次条第一項第二号ロ7に規定する比率(保険会社及びその子会社等に係る法第百三十条各号に掲げる額が存在する場合であって、法第百十一条第二項に規定する説明書類を作成していない場合に限る。) [略] 二 保険金等の支払能力の充実の状況(保険会社に係る法第百三十条各号に掲げる額を用いて定めたものに限り、当該各号に掲げる額に係る細目その他の保険会社の保険金等の支払能力の充実の状況を理解する上で参考となるべき事項として金融庁長官が定めるものを含む。)及び次条第一項第三号ハに規定する保険金等の支払能力の充実の状況(保険会社及びその子会社等に係る法第百三十条各号に掲げる額が存在する場合であって、法第百十一条第二項に規定する説明書類を作成していない場合に限る。) [略] (価格変動準備金の計算) 第六十六条 保険会社は、毎決算期において保有する資産をそれぞれ次の表の上欄に掲げる資産に区分して、それぞれの資産の帳簿価額に同表の積立基準の欄に掲げる率を乗じて計算した金額の合計額以上を当該価格変動準備金として積み立てなければならない。この場合において、当該価格変動準備金の限度額は、毎決算期において保有する資産をそれぞれ同表の上欄に掲げる資産に区分してそれぞれの資産の帳簿価額に同表の積立限度の欄に掲げる率を乗じて計算した金額の合計額とする。 [略] (生命保険会社の責任準備金) 第六十九条 [略] 6 第一項第三号の危険準備金は、次に掲げるものに区分して積み立てなければならない。 一 保険リスク(実際の保険事故の発生率等が通常の予測を超えることにより発生し得る危険をいう。次号、次条第五項第一号、第百五十条第六項第一号及び第一号の二、第百五十一条第五項第一号並びに第二百十一条の六十第一号において同じ。)に備える危険準備金(次号に掲げるものを除く。) 一の二 第三分野保険の保険リスクに備える危険準備金 二 予定利率リスク(責任準備金の算出の基礎となる予定利率を確保できなくなる危険をいう。次条第五項第二号、第百五十条第六項第二号及び第百五十一条第五項第二号において同じ。)に備える危険準備金 三 最低保証リスク(特別勘定を設けた保険契約であって、保険金等の額を最低保証するものについて、当該保険金等を支払うときにおける特別勘定に属する財産の価額が、当該保険契約が最低保証する保険金等の額を下回る危険であって、当該特別勘定に属する財産の通常の予測を超える価額の変動等により発生し得る危険をいう。)に備える危険準備金 7 第一項第三号の危険準備金の積立ては、金融庁長官が定める積立て及び取崩しに関する基準によるものとする。ただし、生命保険会社の業務又は財産の状況等に照らし、やむを得ない事情がある場合又は財務の健全性が十分に確保されており、かつ、保険契約者の利益に資すると認められる場合には、金融庁長官が定める積立てに関する基準によらない積立て又は取崩しに関する基準によらない取崩しを行うことができる。 (損害保険会社の責任準備金) 第七十条 [略] 5 第一項第二号の二の危険準備金は、次に掲げるものに区分して積み立てなければならない。 一 第三分野保険の保険リスクに備える危険準備金 二 予定利率リスクに備える危険準備金 [略] (保険計理人の確認事項) 第七十九条の二 法第百二十一条第一項第三号に規定する内閣府令で定める事項は、生命保険会社にあっては、次の第一号に掲げる事項とし、損害保険会社にあっては、次に掲げる事項とする。 一 将来の収支を保険数理に基づき合理的に予測した結果に照らし、保険業の継続が困難であるかどうか。 [略] (届出事項等) 第八十五条 法第百二十七条第一項第八号に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる場合とする。 [略] 8 第一項第二十五号に規定する不祥事件とは、保険会社、その子会社若しくは業務の委託先、保険会社、その子会社若しくは業務の委託先の役員若しくは使用人(生命保険募集人及び損害保険募集人である者を除く。)、保険会社若しくはその子会社の生命保険募集人若しくは損害保険募集人又はそれらの役員若しくは使用人が次の各号のいずれかに該当する行為を行ったことをいう。 9 第一項第二十五号に該当するときの届出は、不祥事件の発生を保険会社が知った日から三十日以内に行わなければならない。 (健全性の基準に用いる資本金、基金、準備金等) 第八十六条 法第百三十条第一号に規定する内閣府令で定めるものの額の合計額は、保険金等の支払能力に相当する額として金融庁長官が定めるところにより計算した額とする。 [略] (通常の予測を超える危険に対応する額) 第八十七条 法第百三十条第二号に規定する内閣府令で定めるところにより計算した額は、同号の通常の予測を超える危険に相当する額として金融庁長官が定める額とする。 [略] 第八十八条 削除 [略] (保険持株会社に係る健全性の基準に用いる資本金、準備金等) 第二百十条の十一の三 法第二百七十一条の二十八の二第一号に規定する内閣府令で定めるものの額の合計額は、保険金等の支払能力に相当する額として金融庁長官が定めるところにより計算した額とする。 [略] (保険持株会社に係る通常の予測を超える危険に対応する額) 第二百十条の十一の四 法第二百七十一条の二十八の二第二号に規定する内閣府令で定めるところにより計算した額は、同号の通常の予測を超える危険に相当する額として金融庁長官が定める額とする。 [略] (健全性の基準に用いる資本金、基金、準備金等) 第二百十一条の五十九 法第二百七十二条の二十八において準用する法第百三十条第一号に規定する資本金、基金、準備金その他の内閣府令で定めるものの額(保険金等の支払能力の充実の状況が適当であるかどうかの基準を定めるために用いる少額短期保険業者に係る額に限る。)は、次に掲げる額とする。 [略] (通常の予測を超える危険に対応する額) 第二百十一条の六十 法第二百七十二条の二十八において準用する法第百三十条第二号に規定する引き受けている保険に係る保険事故の発生その他の理由により発生し得る危険であって通常の予測を超えるものに対応する額(保険金等の支払能力の充実の状況が適当であるかどうかの基準を定めるために用いる少額短期保険業者に係る額に限る。)は、次に掲げる額を基礎として金融庁長官が定めるところにより計算した額とする。 [略] 以下略