告示の概要
生物学的製剤基準が改正され、特に経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの試験方法が変更された。シードロットの遺伝的安定性試験において、最終継代ウイルスの遺伝子配列解析によるアミノ酸変異の確認や、表現型試験の適用条件が明記された。また、弱毒性試験ではフェレットを用いた感染価・抗体価測定の判定基準が追加された。pH4処理酸性人免疫グロブリンの原画分製造工程における透析・限外ろ過の表記が「pH4の条件下で透析及び限外ろ過の操作を行い」に変更され、小分製品の試験におけるpH試験が追加され、関連する測定方法と基準が規定された。免疫グロブリンG含量試験や重合物否定試験の詳細な規定も一部変更された。
解決される課題・利点
- この告示改正は、生物学的製剤、特に経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの品質管理と安全性の確保における課題を解決することを目的としています。
- 従来の基準では曖昧であったり、最新の科学的知見や技術進歩に対応していなかった試験方法を具体化・厳格化することで、ワクチン製品の均一性と信頼性を向上させます。
- 具体的には、遺伝的安定性試験において、ウイルス遺伝子配列のアミノ酸変異の確認や表現型試験の適用条件を明確化することで、製造ロット間の品質ばらつきを抑制し、予測可能な効果と安全性を担保します。
- また、弱毒性試験にフェレットを用いた動物試験における感染価・抗体価測定の判定基準を導入することで、より臨床的な有効性と安全性を反映した評価が可能となり、人への適用リスクを低減できます。
- さらに、pH4処理酸性人免疫グロブリンの製造工程における品質管理の厳格化や、pH試験、免疫グロブリンG含量試験、重合物否定試験の詳細な規定変更は、これらの製剤が持つべき物理化学的特性や生物学的活性を確実に満たすことを保証し、患者への投与におけるリスクを最小限に抑えることを目指します。
懸念点・リスク
- この告示改正は医薬品の品質・安全性を向上させる一方で、いくつかの懸念点も内包しています。
- まず、新たな試験方法や判定基準の導入は、製薬企業に対して製造工程の見直しや追加的な試験設備の導入、さらには人員の再教育といった多大なコストと時間的負担を強いる可能性があります。
- 特に中小規模の製薬企業にとっては、これらの負担が経営を圧迫し、製品供給の遅延や生産中止につながるリスクも考えられます。
- また、試験動物(フェレット)を用いた弱毒性試験の導入は、動物愛護の観点からの倫理的問題や、動物個体間のばらつきによる試験結果の解釈の難しさ、安定供給の確保といった課題も生じさせます。
- さらに、改正された基準が過度に厳格である場合、新たな技術や製造方法の開発が阻害され、医薬品のイノベーションが停滞する可能性も否定できません。
法令情報
- 法令番号
- 厚生労働省告示第二百五号
- 公布日
- 2025/07/23
- 掲載
- 本紙1512 1P~2P
原文
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十・号)第四十二条第一項の規定に基づき、生物学的製剤基準(平成十六年厚生労働省告示第百五十五五号)の一部を次の表のように改正する。 令和七年七月二十三日 厚生労働大臣 福岡 資麿 (傍線部分は改正部分) 改 正 後 医薬品各条 (略) 経鼻弱毒生インフルエンザワクチン 1.2 (略) 3 試験 3.1 シードロットの試験 3.1.1 遺伝的安定性試験 発育鶏卵で5代継代培養し、最終継代ウイルスの遺伝子配列を適当な方法により解析するとき、既知の遺伝子座において低温馴化,温度感受性又は弱毒性表現型に影響するアミノ酸変異を認めてはならない。この試験に適合しない場合にあっても、最終継代ウイルスについて3.3.2を準用した表現型試験に適合するときは、この試験に適合とみなす。 3.2 (略) 3.3 原液の試験 3.3.1 (略) (削る) 3.3.2 弱毒性試験 試験には、ワクチンに含まれるインフルエンザウイルスに対する抗体が検出されないフェレットを用いる. 8~10週齢のフェレット3匹以上に、1匹当たり適当な濃度に希釈した試料1mLを経鼻接種して、3日間以上観察するとき、いずれの動物もインフルエンザ様症状を示してはならない。最終観察後,動物から鼻甲介及び肺でのウイルス感染価あるいは血清を用いた抗体価を測定するとき、承認された判定基準に適合しなければならない。 3.3.2 (略) 3.4 (略) pH4処理酸性人免疫グロブリン 1 (略) 2 製法 2.1 原血漿 2.2 原画分 免疫抗体を変質させることなく,かつ,肝炎ウイルスその他の病原微生物を可及的に除去できる適当な方法によって原血漿を分画し、免疫グロブリンG画分を集める.この画分について,pH4の条件下で透析及び限外ろ過の操作を行い、これを原画分とする。 2.3 (略) 3 小分製品の試験 (削る) 3.1 免疫グロブリンG含量試験 一般試験法のセルロースアセテート膜電気泳動試験法を準用して試験すること又はアガロースゲル電気泳動法若しくはキャピラリー電気泳動法により試験することによ り、総たん白質に対するヒト正常免疫グロブリンGの割合を測定する。 また、一般試験法のたん白窒素定量法を準用して試験することにより、たん白質量を測定する、又は日本薬局方のたん白質定量法の方法7 (窒素測定法)の操作法Bを準用して試験することにより求めた総窒素量から、適当な支持体を用いてクロマトグラフ法により求めた添加剤由来の窒素量を 除くことにより、たん白質量を算出する。 本試験の結果として示される総たん白質に対するヒト正常免疫グロブリンGの割合は98%以上であり、かつ、検体1mL中の含量は、表示量の90~110%でなければならない。 3.2 免疫グロブリンG重合物否定試験 一般試験法免疫グロブリンG重合物否定試験又はその他のサイズ排除クロマトグラフィーにより試験する.分析参照品又は分析参照品と同等の溶出位置を示す標準物質の溶出位置に基づきピークを定めるとき,二量体より大きな重合物の量は4.0%以下,凝集体の量は1.0%以下,単量体と二量体の量の和は90.0%以上でなければならない。 3.3~3.6 (略) (削る) 4 その他 4.1 (略) (略)