高重要度
法規的告示
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2025/07/17 (号外164)
建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針の一部を改正する告示
告示の概要
建築物の耐震診断及び耐震改修の促進に関する法律に基づき、同促進のための基本的な方針の一部を改正する告示。改正の背景として、近年頻発する大規模地震(阪神・淡路大震災、能登半島地震など)の多発と南海トラフ地震等の切迫性が挙げられており、従来の耐震化目標では不十分と認識。 主な変更点は、以下の通り。 1. **改正の背景**: 能登半島地震(令和6年1月)による被害や南海トラフ地震等の発生切迫性を明記し、耐震化の重要性を強調。 2. **費用負担軽減**: 高齢者の住宅耐震化における自己資金調達の課題を明記し、地方公共団体に対し助成制度、税制優遇、リバースモーゲージ型住宅ローン等の普及促進をより一層求める。省エネ改修やバリアフリー改修との連携、段階的な耐震改修も推進。 3. **耐震化の現状**: 住宅の耐震化率の推計基準年を平成30年から令和5年に更新。耐震性不十分な住宅の減少数、耐震改修による減少数の推計期間が平成15年から20年間に変更。要緊急安全確認大規模建築物等の耐震性不足解消率の数値も更新。 4. **目標設定**: 住宅は令和17年までに、要緊急安全確認大規模建築物は令和12年までに、要安全確認計画記載建築物は早期に、耐震性不十分なものを「おおむね解消」する目標を明記。 5. **都道府県・市町村の役割**: 都道府県耐震改修促進計画の改定において、改正令(平成30年政令第323号)の趣旨を踏まえ、速やかな改定を促す。特に通行障害既存耐震不適格建築物に関する報告期限の記載に関する注意喚起が追加。 これらの改正により、国、地方公共団体、建築物所有者等による耐震化の取り組みを一層強化し、大規模災害への備えを加速することを目的としている。
解決される課題・利点
- この告示の改正は、近年頻発する大規模地震(特に能登半島地震の教訓を含む)や、南海トラフ巨大地震などの発生切迫性を踏まえ、既存建築物の耐震化を喫緊の課題として再認識し、その取り組みを加速させるためのものです。
- 従来の目標設定や施策では不十分であった点を修正し、より実効性の高い耐震化を推進することが目的です。
- 具体的には、高齢者世帯の経済的負担軽減策の強化や、省エネ・バリアフリー改修との連携による相乗効果、段階的な耐震改修の推進などが示されており、多様な状況の建築物所有者が耐震改修に取り組みやすくなる環境整備を促進します。
- これにより、大規模地震発生時における建築物の倒壊被害やそれに伴う死傷者を大幅に減少させ、国民の生命・財産を守るという社会全体の課題解決に大きく貢献することが期待されます。
- また、耐震化の現状に関する統計情報の更新や、より具体的な目標設定は、地方公共団体や関係機関が取り組みの進捗状況を正確に把握し、効果的な施策を展開するための基盤となります。
懸念点・リスク
- この告示の改正によって耐震化の目標がより明確化され、具体的な施策が示された一方で、その実行には依然として多くの課題が内包されています。
- まず、地方公共団体における助成制度の拡充や税制優遇措置の周知徹底は、財源確保や人的リソースの制約により、地域間で格差が生じる可能性があります。
- 特に高齢者世帯や低所得世帯に対する経済的支援は不可欠ですが、十分な支援が行き届かない場合、耐震化の遅れが生じるリスクがあります。
- また、「おおむね解消」という目標は抽象的であり、達成度合いの評価が困難になる可能性があります。
- 能登半島地震で示されたように、耐震化率の低い地域における住宅の倒壊被害は甚大であり、これらの地域に対する集中的な支援とモニタリングが不可欠です。
法令情報
- 法令番号
- 国土交通省告示第五百三十五号
- 公布日
- 2025/07/17
- 掲載
- 号外164 3P~10P
原文
建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成七年法律第百二十三号)第四条第一項の規定に基づき、建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針(平成十八年国土交通省告示第百八十四号)を次のように改正したので、同条第三項の規定により告示する。 令和七年七月十七日 国土交通大臣 中野 洋昌 建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針の一部を改正する告示 建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針(平成十八年国土交通省告示第百八十四号)の一部を次のように改正する。 次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分のように改める。 改正後 平成七年一月の阪神・淡路大震災では、地震により六千四百三十四人の尊い命が奪われた。このうち地震による直接的な死者数は五千五百二人であり、さらにこの約九割の四千八百三十一人が住宅・建築物の倒壊等によるものであった。この教訓を踏まえて、建築物の耐震改修の促進に関する法律(以下「法」という。)が制定された。 しかし近年、平成十六年十月の新潟県中越地震、平成十七年三月の福岡県西方沖地震、平成二十年六月の岩手・宮城県内陸地震、平成二十八年四月の熊本地震、平成三十年九月の北海道胆振東部地震など大地震が頻発しており、特に平成二十三年三月に発生した東日本大震災は、これまでの想定をはるかに超える巨大な地震・津波により、一度の災害で戦後最大の人命が失われるなど、甚大な被害をもたらした。この震災においては、津波による沿岸部の建築物の被害が圧倒的であったが、内陸市町村においても建築物に大きな被害が発生した。さらに、令和六年一月の能登半島地震においては、耐震化率が低い地域で多くの住宅が倒壊する等の被害が生じた。このように、我が国において、大地震はいつどこで発生してもおかしくない状況にあるとの認識が広がっている。また、南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震及び首都直下地震については、発生の切迫性が指摘され、ひとたび地震が発生すると被害は甚大なものと想定されており、特に、南海トラフ巨大地震については、東日本大震災を上回る被害が想定されている。 建築物の耐震化については、建築物の耐震化緊急対策方針(平成十七年九月中央防災会議決定)において、全国的に取り組むべき「社会全体の国家的な緊急課題」とされるとともに、災害対策の推進等に係る基本的な事項を定めた国土強靱化基本計画(令和五年七月閣議決定)及び防災基本計画(昭和三十八年六月中央防災会議決定。令和六年六月修正)、今後の発生が懸念される大規模地震への対策をとりまとめた南海トラフ地震防災対策推進基本計画(令和七年七月中央防災会議決定)、首都直下地震緊急対策推進基本計画(平成二十七年三月閣議決定)及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画(令和四年九月中央防災会議決定) においても推進すべき施策として位置づけられているところである。特に切迫性の高い地震については発生までの時間が限られていることから、効果的かつ効率的に建築物の耐震改修等を実施することが求められている。 この告示は、このような認識の下に、建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るため、基本的な方針を定めるものである。 一 建築物の耐震診断及び耐震改修の促進に関する基本的な事項 5 所有者等の費用負担の軽減等 耐震診断及び耐震改修に要する費用は、建築物の状況や工事の内容により様々であるが、相当の費用を要することから、所有者等の費用負担の軽減を図ることが課題となっている。 特に、所有者等が高齢者である住宅の耐震化においては、自己資金の調達についても課題となっている。 こうしたことを踏まえ、地方公共団体は、所有者等に対する耐震診断及び耐震改修に係る助成制度等の整備や耐震改修促進税制、高齢者向けリバースモーゲージ型住宅ローン等の耐震化に関する融資制度の普及に努めることで、密集市街地や緊急輸送道路・避難路沿いの建築物の耐震化、所有者等が高齢者である住宅の耐震化を促進するなど、重点的な取組を行うことが望ましい。特に、耐震診断義務付け対象建築物については早急な耐震診断の実施及び耐震改修の促進が求められることから、特に重点的な予算措置が講じられることが望ましい。 また、省エネ改修やバリアフリー改修の機会を捉えた耐震改修の実施、段階的な耐震改修の実施等の取組を行うことも考えられる。国は、地方公共団体に対し、必要な助言、補助・交付金、税の優遇措置等の制度に係る情報提供等を行うこととする。 (以下略)